YouTubeで無料の理科講座、マーク・ローバーが1,000本を34言語で公開
- マーク・ローバーさんが、米国の中学相当の学年向けの無料の理科講座をYouTubeで公開しました。制作費は6,000万ドル(約96億円)で、1,000本以上を34言語にそろえる計画です。教室で飽きさせない設計は、動画の視聴維持にも使えます。
- 教育は収益化しにくい分野ですが、そこに個人クリエイターが96億円を投じた例です。答えを先に見せない構成と、0円で再現できる小道具の縛りは、他のジャンルの動画にも持ち帰れます。
- 教育・解説系のチャンネル運営者にまず関係し、長尺の視聴維持や他のクリエイターとの共同制作を考えているチャンネルにも参考になります。

無料の理科講座をYouTubeで公開、制作費は6,000万ドル
マーク・ローバーさんが、米国の6〜8学年(日本の中学校にあたる学年)向けの理科講座 Class CrunchLabs をYouTubeで始めました。
最初の2コースは「Carnival of Collisions」と「Mission MagLev」です。
それぞれ数十本の動画に、授業で使う補助教材と活動が付きます。
接触力の物理を遊園地のゲームで確かめ、磁石と電気の力で列車を浮かせる内容です。
コースは今後増えていきます。
ElectroBOOM や How Ridiculous といったYouTubeクリエイター、全米科学教師協会(NSTA)、NASA などと組んで、最終的に1,000本以上の動画を34言語でそろえる計画です。
日本語がこの34言語に含まれるかは原文に書かれていません。
目標は2030年までに米国の教室の70%に入ることです。
教室10室のうち7室に届かせる計算になります。
発表は YouTube Official Blog です。

教室では逃げられない視聴者をどう引きつけるか
動画づくりに持ち帰れるのは、この部分です。
ローバーさんは教室とYouTubeの違いをこう説明しています。
YouTubeの子どもは見たいからクリックする。
教室の生徒は逃げられない。
It's no longer 'sage on a stage' where you just give them the answer.
そのうえで、答えを先に渡さない授業を組み立てています。
運動エネルギーの単元では「トラックに乗っていたらブレーキが壊れた。どう止めるか」という状況から始め、2週間かけて答えにたどり着きます。
感情を動かすことの意味についても、こんな言い方をしています。
It's hard to memorize an equation, but you remember every word to a song you sang as a teenager because it made you feel something.
式は覚えられないのに、10代に歌った歌の歌詞は全部残っている。
感情が動いたからだ、という説明です。
置き換えれば、動画の冒頭で結論まで言い切らず、視聴者に「どうなるんだろう」と思わせる余地を残すことになります。
答えより先に状況を見せる。
長尺の視聴維持で言われるのと同じ発想です。
教室の教材は0円でそろうものだけ
工作の材料は、すべて0円で済むものに限っています。
画用紙、ストロー、クリップ、ペットボトルのキャップ。
先生がすでに持っているか、ゴミ箱から拾えるものだけです。
予算が潤沢な私立学校でも、Title I school(米国で低所得世帯の生徒が多い学校に補助金が入る制度の対象校)でも同じように動く必要があるためです。
コースを無料にしたのも同じ考え方です。
採用までの抵抗をなくすためだと説明しています。
先生が信頼する団体と組み、先生には「あなたの生徒は私の動画を知っている。だから手伝わせてほしい」と伝えている。
教室の主役は先生で、自分は動画を用意する側だという立場です。
出演する科学者やクリエイターも多様にしています。
自分とは違う背景、性別、出身国の人を多く出す。
「自分が見たことがないものにはなれない」という考え方です。
4年半で毎月1週間、完成後は恒久的に無料
制作費は6,000万ドル(約96億円)を超えます。
完成後は恒久的に無料にする、というのがローバーさんの言い方です。
ローバーさん自身は4年半にわたって、毎月1週間をこの動画づくりに充てます。
54か月ぶんの1週間なので、通算1年以上を1つの企画に使う計算です。
過去には2,000万本の植樹などを掲げてきた人で、今回を自分の仕事で最も重要な取り組みと位置づけています。
1人で作らず、同じジャンルの作り手と組む
1,000本という本数を1人で作るのは無理があります。
ローバーさんは同じ分野のクリエイターや団体と組む方向を選びました。
ElectroBOOM や How Ridiculous は実験系のチャンネルで、NSTA や NASA は学校の先生が名前を知っている団体です。
教育の現場に届けるには、先生が信頼する名前が要る。
その順番で協力先を選んでいるのが読み取れます。
解説系のチャンネルが学校や企業と組むときにも、同じ順番が使えます。
※円換算は1ドル=160円(2026年8月時点の目安)です。
自分のチャンネルにどう影響するか
教育や解説のチャンネルでなくても、この企画から抜き出せる設計はあります。
直近で伸びなかった動画を1本選び、冒頭で結論を言い切っている部分を後ろにずらした台本を書いておくと、離脱が起きる位置が変わります。
教室と同じで、見る理由を先に渡すほうが最後まで見てもらいやすくなります。小道具や撮影の舞台を、視聴者の手元で再現できるものに寄せておくと、同じことをやってみた投稿やコメントが増えます。
ローバーさんが工作の材料を0円に縛ったのと同じで、材料のハードルを下げるほど真似する人が増えます。大きなシリーズを始めるなら、月に1週間ぶんなど制作の枠をカレンダーに先に入れておくと、あとで他の案件に押し出されません。
4年半続ける前提で組まれた計画なので、期間の長さそのものが設計の一部です。
出典
- Mark Rober’s mission to support science classroomsYouTube Official Blog

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