Slow Venturesがクリエイターの会社に出資、比率は2割未満
- Slow Venturesが6,400万ドル(約102億円)の基金で、YouTubeで発信するクリエイターの会社に直接出資しています。比率は2割未満で収益の分配も取らず、広告以外の稼ぎ方を作る運営者にとって資金の集め方の実例になります。
- 動画の広告収益や案件だけで組んだ売上から、自社事業を柱にする形へ収入を移す動きが、投資会社の資金で進んでいます。
- 商品や講座など自分の商売を持ち、そこに広告以外の収入を集めたいチャンネル運営者に関係します。外部から出資を受ける前提で法人の作り方を考える人の判断材料になります。

Slow Venturesは、YouTubeやInstagram、LinkedInで発信するクリエイターの会社に直接お金を入れています。
共同創業者のサム・レスリーン氏は、投資先を「カルト」と呼んでいます。
マスマーケット向けクリエイターの時代は、もう過ぎた。
我々が投資しているのはカルトです。
いちばん価値のあるカルトは、CNBCで話せるようなものではない。
狙うのは、特定の分野に濃いファンが集まる小さな圏域です。
フォロワーが何百万人いるかどうかは基準にしていません。
Slow Venturesが6,400万ドル基金でクリエイターに出資
原資は、2025年2月に発表した6,400万ドル(約102億円)の基金です。
集めたお金を「熱心なコミュニティ向けに会社を作ろうとしているクリエイター」に配る目的だと説明しています。
残りは今後2〜3年で出し切る計画です。
この1年で出資したのは、Z世代向けのキャリア相談を発信するErin McGoff氏、繊維製造の専門家Will Lasry氏、商業漁師のKyle Lee氏です。
McGoff氏が150万ドル(約2.4億円)、Lasry氏が250万ドル(約4億円)、Lee氏は金額を公表しておらず、100万〜300万ドル(約1.6億〜4.8億円)の間だとSlow Venturesは話しています。
3人に共通するのは、YouTubeなどでの発信力は強いものの、SNSで有名になること自体をゴールにしていない点です。
同じ基金からは、インタビュー番組「Diary of a CEO」を運営するSteven Bartlett氏、理学療法士のTayla Cannon氏、木工職人のJonathan Katz-Moses氏、車チャンネルのVINwikiにも出資しています。

出資はクリエイターの持ち株会社に入る、比率は2割未満
自分のチャンネルに置き換えて読むと、この構造の意味が見えてきます。
パートナーのミーガン・ライトキャップ氏は、投資の型をこう説明しています。
お金はクリエイター個人ではなく、複数の事業をぶら下げる持ち株会社(受け皿の会社)に入れる。
同氏はこれを、Feastablesという商品への投資というより、Beast Industriesという会社ごとへの投資に近いと例えています。
出資比率は15〜20%を超えないのが普通で、しかも創業者が自分で持っている持ち分のなかから出します。
会社の5分の4以上は創業者の手元に残る計算です。
共同事業の例も分かりやすいものでした。
クリエイターの持ち株会社が別企業と50対50で事業を作った場合、Slow Venturesの出資はクリエイター側の50%のなかにしか及びません。
相手企業は50%をそのまま受け取れます。
収益の分配も取りません。
この仕組みなら、あとから入る企業は自分の取り分が削られないと分かります。
だからクリエイター側に資金が集まりやすくなる、という理屈です。
Kyle Lee氏は獲った魚を冷凍して直販、フォロワー数万が売上を後押し
出資先の一人、Kyle Lee氏は、自分の漁業で獲った魚を急速冷凍して消費者へ直送する通販(D2C)を運営しています。
オンラインのフォロワーが数万人いることが、その売上を後押ししています。
デジタルの視聴者を、商売を大きくするための手段として使っている形です。
投資の基準は「信頼とコミュニティ」、AI製品は追わない
レスリーン氏は、AIの広がりがこうした業種への投資をむしろ重要にしたと話しています。
信頼に対するプレミアムは、かつてなく高まっています。
製品を作るのは簡単すぎるので、より良い製品を作ることはもはや投資対象になりません。
投資対象になるのは信頼とコミュニティです。
Slow Venturesは生成AIのような流行は追っていません。
テキスタイルや漁業のような昔からある産業はなくならない、という見方です。
収益の多角化を、投資の形で実行している
Slow Venturesがやっているのは、クリエイターがよく言われる「収益源をクリエイターの経済圏の外に広げる」を、投資する側から実行していることです。
専門性を持ったクリエイターに資金を出すことで、SNSの外側に間口が広がります。
日本のチャンネル運営者が同じ条件で出資を受けられるファンドがあるかは、原文に書かれていません。
ただ、受け皿会社を作って持ち分の一部を売るやり方は、再生回数や案件単価とは別の場所から資金を集める方法です。
広告収益と案件だけで組んだ売上は、視聴回数が動けばそのまま揺れます。
自分のチャンネルの収入のうち、動画の外で完結している事業がどれくらいあるかを一度数えておくと、外から資金の話が来たときに検討する場所がはっきりします。
※円換算は1ドル=160円(2026年8月時点の目安)です。
自分のチャンネルにどう影響するか
再生回数や登録者を伸ばす話の先に、会社を持つ話があります。
自分のチャンネルに置き換えると、今のうちに決めておけることが3つあります。
収入の内訳を、動画の外で完結している事業ごとに分けて書き出しておく。
広告収益、案件、グッズ、講座、会員制のどこがプラットフォームに依存していないかを並べると、外部から資金を受ける前提で何を会社に載せるかが見えます。法人を作るなら、チャンネル運営の会社と商品の会社を分けるか、持ち株の形でまとめるかを先に決めておくと、出資や共同事業の相談が来たときに構造を組み直さずに済みます。
共同事業の相手がいるなら、出資比率が自分側の持ち分のなかだけに及ぶ形を提案してみる。
相手企業の取り分を削らない設計は、交渉で相手が受け入れやすい条件になります。

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