競合の商標で広告を出しても侵害ではない 米連邦控訴審が示した線引き
- 米第11巡回区控訴裁判所が2026年8月4日、キーワード広告の入札そのものは商標侵害にあたらないと判断しました。
- 理由は、入札は舞台裏の処理で、消費者が相手の商標を見ることはないからだとされています。
- 一方で、広告文や商品説明に商標を書いた部分については責任が認められました。

入札は「見えない」から侵害ではない
米第11巡回区控訴裁判所が2026年8月4日、Deltona Transformer 対 NOCO の事件で、競合の商標をキーワード広告に入札する行為は商標侵害にあたらないと判断しました(Technology & Marketing Law Blog)。
理由は明快です。
キーワードの入札は舞台裏で行われる処理であり、消費者は相手の商標を目にすることがない。
見えないものによって出所の混同は起きない、という論理です。
同様の判断は他の巡回区でも出ており、第11巡回区がそこに加わった形になります。

争いの中身
両社は自動車用バッテリー充電器の競合です。
Deltona は自社製品名について権利を主張し、NOCO はその語が一般名称だとして競合製品に使っていました。
一審の陪審は Deltona を支持し、実損害130万ドル(約2億円)、懲罰的損害575万ドル(約9億円)の評決を出しました。
裁判所はさらに1,200万ドル(約19億円)の利益吐き出しを命じ、キーワード広告と比較広告を除外した恒久的差止も出しています。
控訴審は、その製品名を一般名称ではなく記述的商標にあたると整理し、30年以上の使用で識別力を獲得していたと認めました。
責任が残った部分
一方で、責任が認められた部分もあります。
- Amazonの広告文に商標を直接書いた点。
相手の商品を「その商標の製品」として売っているように見せたと評価されました。 - 商品説明のなかでの使用。
舞台裏の入札と違い、注意深い消費者には見える形だからです。
線引きは「消費者の目に触れるかどうか」に置かれています。
動画のタグと、画面に出る文字は分けて考えます
この判決の線引きは「消費者の目に触れるかどうか」でした。
同じ物差しを自分のチャンネルに当てると、2つに分かれます。
視聴者に見えない側は、動画のタグやキーワードの設定です。
判決の考え方をそのまま当てはめれば、ここに他社の名前を入れても出所の混同は起きにくい、ということになります。
見える側は、タイトル、説明文、サムネイルの文字、動画のなかの表示です。
今回責任が認められたのも、広告文と商品説明という「見える」場所でした。
比較レビューで他社の名前を出すこと自体は普通のことですが、その製品の公式動画であるかのように見せる書き方をすると、位置づけが変わります。
米国のひとつの巡回区の判断なので、日本でそのまま通るわけではありません。
ただ、見えるか見えないかで扱いを分ける発想は、動画を作るときの目安になります。
※円換算は1ドル=160円(2026年8月時点の目安)です。
自分のチャンネルにどう影響するか
米国の商標訴訟ですが、動画で商品を扱う人にとっては読み替えができます。
1. 検索されるための語の使い方は、見える場所ほど慎重に
タイトル、サムネイルの文字、概要欄は、視聴者の目に触れる場所です。
ここに他社の商品名やブランド名を書くときは、比較・レビュー・解説であることが読み取れる書き方にしておくほうが安全です。
2. タグや隠しキーワードは「見えない」が免罪符ではない
今回の論理は、消費者に見えない処理は混同を生じさせないという点にありました。
ただし、これは米国の商標法の枠組みでの判断です。
日本でも同じ結論になるとは限りません。
関連の薄いブランド名をタグに詰め込む行為は、プラットフォームのスパムポリシー側でも問題になります。
3. 企業案件では、比較対象の書き方を事前に合わせる
競合製品との比較を含む案件では、相手ブランドの表記方法を発注元と事前に確認しておくと、公開後の削除依頼を避けられます。
出典
- 11th Circuit Rejects Keyword Advertising Liability - Deltona v. NOCOTechnology & Marketing Law Blog

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