事例・戦略

音楽PVを起点に78人のクリエイターと組み4360万再生、Doveの旧正月キャンペーン戦略

  • Dove(ダヴ)がマレーシアの旧正月に合わせ、オリジナル曲のミュージックビデオを軸に78人のクリエイターとメディアを重ね、4300万回超の再生を達成しました。
  • 単発のPR動画では人の心に残りませんが、「楽曲」という文化的事象を作ってクリエイターに参加させる構造が、注目と購入意向の両方を高める好例です。
  • 季節イベントのキャンペーンを考えている企業のマーケターや、企業案件に参加するチャンネル運営者に役立つ内容です。
画像はイメージです

楽曲が入り口になる、旧正月キャンペーンの構造

ユニリーバのヘアケアブランドDoveが、マレーシアの旧正月(CNY)シーズンに展開したキャンペーンの事例です。
エージェンシーのAnyMind Groupが制作を統括し、現地の制作スタジオ1119 Entertainmentと組んでオリジナル曲とミュージックビデオを制作しました。
これを土台に、YouTubeやInstagram、TikTok、Xiaohongshuで活躍する78人のクリエイターと、マレーシアの中国語圏向けメディア「Leesharing」を巻き込み、総再生回数4,360万回、リーチ1,610万人、エンゲージメント(いいね・コメント・共有・保存)9万7,600件を記録しました。

発案のきっかけは、前年の旧正月コンテンツで実績のあった1119 Entertainmentとの再タッグです。
AnyMind Groupでこのキャンペーンを統括したYoong Xin Loh氏は、旧正月の歌はマレーシアの文化に深く根付いており、人々が毎年楽しみにしていると説明します。
つまり、商品の単純なPRではなく、クリエイターが「参加したい」と思える文化的な土台を先に用意したことが、このキャンペーンの出発点でした。

画像はイメージです

それぞれのレイヤーに別々の役割を持たせる

キャンペーンは「ミュージックビデオ」「クリエイターの投稿」「メディアの記事」の3つのレイヤーで構成されました。
ポイントは、それぞれが別々のPRではなく、同じ目的に向かって異なる役割を担ったことです。

  • ミュージックビデオ: 認知と話題の起点。
    YouTube、Instagram、TikTok、Xiaohongshuで先行公開され、クリエイターが参加しやすい空気を作りました。
  • クリエイター: 78人が、楽曲を使った動画や、旧正月に向けたヘアケアルーティンの紹介を投稿しました。
    AnyMindの管理ツール「AnyTag」で全員の進捗を管理し、公開前にAnyMindとDoveの二段階承認を経る仕組みです。
    ただし、投稿内容の台本は固定せず、クリエイターの裁量に任せています。
  • メディア: Leesharingが担当し、広告記事やFacebook投稿、InstagramやXiaohongshuのコンテンツを配信しました。
    こちらはブランドの商品説明やプロモーション情報を伝える「成果(購入)」担当です。

購入の後押しとして、Doveの対象商品を買うとサンリオの陶器ポットがもらえる特典も用意されました。

美容以外のクリエイターを入れる理由

参加した78人は、美容だけでなく、ファッション、フィットネス、ヘアスタイリングのジャンルから集められました。
Doveは毎日使うパーソナルケアブランドなので、美容だけに絞らず、ファッションやフィットネス系のライフスタイル文脈の中で商品を見せたほうが、自然に響くという判断です。

実際、ファッションやフィットネスのクリエイターは、頻繁なスタイリングやドライヤーによる髪のダメージを抱えていることが多く、商品の説明が入り込みやすい土壌がありました。
中でも、@kimberly.wavことKimberly氏は、1人で490万回以上の再生を記録しています。
Yoong氏によれば、シンプルで質の高いコンテンツを投稿し続けるクリエイターで、予想をはるかに超える結果だったとのことです。

数値目標は各レイヤーで大きく超過

結果は各レイヤーとも目標を大きく上回りました。

  • ミュージックビデオ: リーチが目標の44.7倍、再生回数が2.87倍
  • クリエイター層: リーチが目標の77.13倍、再生回数が69.72倍
  • メディア層: リーチが目標の1.51倍、再生回数が2.37倍

Yoong氏は、「旧正月のような混戦期は、表示回数がオートプレイで水増しされることがある。
本当に響いたかどうかは、エンゲージメントの数値を見たほうが正確」と話します。
シェアや保存が多かったのは、視聴者が単に眺めるだけでなく、誰かに教えたり、買い物リストに加えたりした証拠です。

この事例から見えてくるのは、多層キャンペーンが成功する条件は、単にチャンネルを増やすことではないという点です。
それぞれのレイヤーに明確な役割を与え、単一のクリエイティブビジョンで全体を貫くこと。
そして、メディア、クリエイター、パブリッシャーが縦割りにならないよう、予算配分とチーム編成を最初に設計しておくことです。
Yoong氏は、伝統的な企業組織ではメディア担当、クリエイター担当、パブリッシャー担当がそれぞれ別のチームに分かれ、評価指標もバラバラになりがちだと指摘します。
良いクリエイターや制作パートナーの予約は早い段階で埋まるため、季節キャンペーンは開始の6か月前から動き始めるのが望ましいと話しています。

Net Influencer

自分のチャンネルにどう影響するか

季節イベントの案件を受けるときは、単発のPR動画ではなく、テーマ曲やチャレンジなど「参加する理由」を先に作ると、複数のクリエイターを巻き込みやすくなります。

美容など一つのジャンルに絞らず、ファッションやライフスタイルなど周辺のクリエイターへ声をかけると、商品を見せる文脈が広がって、同じ内容でも相手に響き方が変わります。

案件の進行は、承認フローを最初に固め、一括管理できるツールに載せることで、締切前の混乱や「言った言わない」を避けられます。
企業側のチームが縦割りで動いているなら、早い段階で窓口を1つに絞る提案をしてください。

出典

  1. How Dove Turned a Chinese New Year Music Video Into a Cultural Engine Behind a 43M-View Creator CampaignNet Influencer

コメント

まだコメントはありません。最初の1件をどうぞ。

投稿された内容とお名前はこのページに公開されます。個人情報や、他の方を傷つける内容は書かないでください。 URLを含むコメントは投稿できません。内容によっては予告なく削除することがあります。