法務・判例

フェアユース無視の削除申請、主観的信念があれば免責。米裁判所が判断、EFFは控訴へ

  • 米マサチューセッツ州の連邦裁判所が、著作権者が主観的に侵害だと信じていれば、たとえその判断が不合理でも削除申請の責任を問えないと判断しました。
  • フェアユースを考慮しない削除申請が許されると、批判や報道目的の動画が一方的に消え、YouTubeのアカウント停止リスクも高まるため、日本の運営者にも関わる問題です。
  • 行政の会議を取材して公開する市民ジャーナリストや、既存映像の引用を多用するチャンネル運営者に特に影響します。
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フェアユースを無視した削除申請が「主観的信念」で免責に

米国の連邦裁判所が、著作権者が「侵害だと思っていた」と主張すれば、たとえその判断が客観的に不合理でも、誤った削除申請の責任を問えないとの判断を下しました。
EFF Deeplinksが2026年9月3日に伝えています。
原告の市民ジャーナリスト集団を支援する電子フロンティア財団(EFF)は控訴するとしています。

この判断は、YouTubeを含むオンラインプラットフォームの削除申請制度を定めた米国デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく訴訟で示されました。
DMCAの削除申請は、YouTubeの著作権侵害の申し立て手続きの基盤となっているため、日本のチャンネルにも同じ制度が適用されます。

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市民記者のYouTubeチャンネルが選挙直前に停止

問題のケースは、米マサチューセッツ州ウォルサム市の市政を取材するボランティアの市民記者グループ「Channel 781 News」がきっかけです。
同グループは市議会の公的会議の録画から短く価値のある抜粋をYouTubeに投稿していました。

2023年9月、市の公共アクセス放送局を運営するWCACが、Channel 781の動画15本を対象にYouTubeへ3件の削除申請を送信しました。
YouTubeは該当動画を削除し、3回の警告(ストライキ)制に基づき、地元の選挙の直前というタイミングでチャンネル全体を一時的に無効化しました。

Channel 781側は、WCACが削除申請において重要な事実を故意に誤って伝えたとして、DMCA第512条(f)に基づき訴訟を起こしました。
この条文は、著作権者が悪意を持って虚偽の申告をした場合に救済を認める規定です。

裁判所が認めた「主観的な善意の信頼」の判断材料

訴訟で争点となったのは、著作権者が削除申請の前にフェアユース(引用や報道目的なら許可なく使える米国のルール)をどの程度考慮すべきかでした。

Channel 781側は「侵害だという信念は、本人が本当に信じていることに加えて、客観的に合理的であることも必要」と主張。
一方WCAC側は「本人が主観的に善意で信じていれば十分」と主張し、裁判所はWCAC側の解釈を支持しました。

裁判所が根拠にしたのは、削除申請を送ったWCACの担当者がフェアユースについて文献を読み、解説動画を見て、動画ごとにフェアユースに当たるかどうかを判断していた事実です。
調査は不十分でしたが、「完全で合理的なフェアユース分析は求められない」と判断しました。

フェアユースの検討が形骸化するリスク

裁判所は、WCACが短い抜粋しか使われていないことや、対象が創作作品ではなく事実記録であること、市場への影響をほとんど考慮していなかったことも認めています。
担当者がフェアユースに関する重要な要素を無視していた事実も確認されました。
政治的な批判目的で映像を使われたことにWCACが反発し、著作権とは無関係の動機があった可能性も指摘されています。

それでもなお「主観的な信念」があれば免責されるという判断は、フェアユースの検討義務を形骸化させる、とEFFは批判します。
DMCAの削除申請は一度送信されると合法的な表現がほぼ即座に消え、複数件の申請はチャンネル全体の無効化につながります。

裁判所自身も、Channel 781側の動画にはフェアユースが成立する強い根拠があるとしながら、純粋に主観的な基準の下では「自分がフェアユースだとは結論しなかったとしても」、WCACの主張した信念を退けることはできないとしました。
EFFは第1巡回区控訴裁判所へ控訴する方針です。

自分のチャンネルにどう影響するか

まず自分がどちら側に立つか確認してください。
行政機関や企業が保有する映像を切り取って報道・批評目的で使うチャンネル運営者は、今回の判断で削除申請を受けるリスクが高まったと考えておくとよいです。

  1. 他人の映像を引用して使う場合は、使う分量、元の作品の性質、市場への影響を記録として残しておくと、仮に削除申請されてものちの主張がしやすくなります。
  2. 自作動画に批判的なコメントがつくなどして、相手側に「嫌がらせ目的」の削除申請を送られる可能性がある場合は、普段から動画の制作意図や引用の必要性を概要欄やブログに残しておくと、裁判で有利になる根拠になります。
  3. 削除申請を受けてしまった場合は、YouTubeの異議申し立て手続きと並行して、弁護士に相談したうえでDMCA第512条(f)に基づく救済(誤った申請者への損害賠償請求)も選択肢に入ることを知っておいてください。
    日本の制度ではなく米国法の話ですが、YouTube上の削除は米国の法律に基づいて運用されています。

出典

  1. Court Rules Against Citizen Journalists in DMCA Takedown Case—EFF Will AppealEFF Deeplinks

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