海賊版を公式ストアに流す手口、JYPが配信会社に身元開示の召喚状
- Stray Kidsの未発表曲が音楽配信サービスを通じてApple MusicやYouTubeに無断公開されました。所属レーベルJYPエンターテインメントが配信会社に投稿者情報の開示を求める召喚状を申請し、著作権侵害の主犯を特定しようとしています。初出で「DMCA召喚状」とは何か、日本の運営者にもどう関係するかを説明します。
- 音楽業界での取り組みですが、YouTubeの動画・音源にも同じく著作権法の仕組みが適用されるため、自前の楽曲や動画が無断転載された際の対処法として使える手続きです。
- オリジナル楽曲や音源を配信しているチャンネル運営者、音楽系コンテンツを扱う運営者には特に関係します。

海賊版が正規ストアに紛れ込む手口
K-popグループStray Kidsは全米アルバムチャートで9作連続1位を記録する人気グループです。
人気が高いぶん、新曲が公開されると数時間のうちに非公式なコピーが拡散されます。
今回は、よくある海賊版サイトではなく、正規の音楽配信サービスを通じて海賊版が配信されたのがポイントです。
音楽配信サービスは、登録すれば誰でも楽曲をApple MusicやYouTubeなどに出品できます。
年間費を払えば、独立系の配信会社が正規の音楽プラットフォームに楽曲を並べてくれます。
ISRCコード(国際標準レコーディングコード)やUPCバーコードも付与され、YouTubeには自動生成の「アートトラック」として表示されます。
この仕組みは誰でも音楽を配信できる便利な反面、海賊版や無断転載の温床にもなっています。

未発表曲が「New Vibs」名義で配信された事件
JYPエンターテインメントは2026年5月9日、Stray KidsのメンバーHanの楽曲「back to life」をStray KidsのYouTubeチャンネルで公開しました。
この楽曲は当時ストリーミング配信されておらず、グループの企画シリーズ「SKZ-PLAYER」の一環として動画のみの公開でした。
すぐに非公式のリッピング音源がソーシャルメディアや海賊版サイトで拡散されました。
さらに、JYPはこの楽曲が正規のチャンネルを通じてYouTube、Instagram、TikTok、Apple Musicに登場しているのを確認します。
アーティスト名は「New Vibs」。
配信元は米フロリダ州タンパに拠点を置く配信会社Symphonic Distributionでした。
削除申請から召喚状へ、身元情報の開示を要求
JYPは2026年5月に、Symphonic配信に対して著作権侵害の削除申請(DMCA削除通知)を送りました。
Symphonicの法務チームは調査を約束しました。
しかし、JYPはこれで終わらせませんでした。
先週、JYPの弁護士がカリフォルニアの連邦裁判所にDMCA召喚状を申請します。
DMCA召喚状とは、著作権者が裁判を起こさずに、オンライン仲介業者に対して侵害者の情報を開示させる手続きです。
裁判所の書記官の署名があれば足ります。
申請では、以下の情報の開示を求めています。
- 「New Vibs」アカウントの氏名、住所、IPアドレス、電話番号、メールアドレス
- 銀行のルーティング番号や口座番号を含む支払い記録
- アカウントの更新履歴や関連住所
つまり、配信で得たお金の流れを追うことで、誰が海賊版をアップロードしたのかを特定しようとしています。
召喚状が発行されたかどうかは、現時点ではまだ明らかになっていません。
Symphonicが応じるか、それとも「New Vibs」のアカウント保持者が裁判所に出て異議を唱えるかは、今後の展開次第です。
あなたの楽曲・動画が無断配信されたら
今回は音楽配信の事例ですが、同じ仕組みは動画にも当てはまります。
あなたのチャンネルの動画や音源が、無断で他の配信サービスにアップロードされた場合、DMCA削除通知を送るだけでなく、DMCA召喚状を申請して投稿者の情報を開示させることが可能です。
日本の運営者にとっても、著作権侵害の相手を特定する手段として覚えておいて損はありません。
なお、米国以外の国ではDMCA召喚状が使えるとは限りませんが、YouTubeの著作権削除の仕組み自体は米国の著作権法に沿って運用されているため、同じ制度が日本のチャンネルにも適用されます。
出典: TorrentFreak
自分のチャンネルにどう影響するか
著作権侵害の被害にあったとき、相手の個人情報をどうやって特定するのか。
その手段の一つを知っておくと、いざというときに動きやすくなります。
自分の動画や音源が無断転載されたら、まずは該当プラットフォームにDMCA削除通知(著作権侵害の削除申請)を送ります。
申請先は各プラットフォームのヘルプセンターにあります。削除だけでは許せない場合や、相手に損害賠償を求めたい場合は、著作権者側から裁判所にDMCA召喚状を申請して、配信会社に対して投稿者の氏名・住所・IPアドレス・支払い情報の開示を求める道もあります。
海外配信会社が相手だと、日本の法律ではなく米国の手続きになることがあります。
英語でのやり取りや米国の裁判所の手続きが必要になる可能性があるため、専門家(弁護士)に相談するのが確実です。逆に、あなたが第三者から権利を譲り受けた音源や、業務委託で制作した楽曲を配信する場合は、権利関係がクリアであることを確認しておくと、トラブルを避けられます。

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