「不当な削除申請だ」と訴えたYouTubeチャンネルが敗訴 申請側は「検討した記録」で守られる
- 市議会の中継動画を転載して削除されたYouTubeチャンネルが、削除申請の送り主を「うその申請だ」と訴えて敗訴しました。
- 米国の裁判所は、申請側に「引用にあたるか検討した記録」があれば、判断が甘くても責任は問えないと判断しました。
- 他人の動画を切り貼りして使うチャンネルにとって、削除申請への反撃はほぼ勝てないという現実が改めて示されました。

市議会の録画を転載したら、チャンネルごと止められた
Channel 781は、マサチューセッツ州ウォルサム市のローカルニュースを配信するYouTubeチャンネルです。
市議会の中継を録画していたのは、市の公共アクセスチャンネル(行政や地域の情報を流す放送枠)を運営する委託先の団体WCACでした。
Channel 781はその録画からニュースになる部分を無断で切り出し、タイトルと字幕を付けて投稿していました。
2023年9月、WCACはYouTubeに削除申請を3件送ります。
対象は動画15本。
YouTubeは動画を削除し、チャンネルも一時停止しました。
ここで使われた「削除申請」は、米国の著作権法(DMCA)にもとづく手続きです。
YouTubeの「著作権侵害の申し立て」はこの法律に沿って運用されていて、日本語のヘルプでも、異議申し立てへの対応期限は「米国のカレンダーで10営業日」と、米国基準で書かれています。
米国の裁判の話に見えて、実はすべてのチャンネル運営者に関わる制度です。

「うその申請だ」と訴え返したが、負けた
米国の著作権法には、うその削除申請をした側に損害賠償を求められる決まりがあります(512(f)条)。
Channel 781はこれを使い、「WCACはフェアユース(引用や報道なら許可なく使えるという米国のルール)を検討せずに申請した」と訴えました。
しかし連邦地裁は、この訴えを退けました。
決め手は、WCAC側に「検討した記録」があったことです。
担当者はフェアユースの説明をメールで読み、YouTubeの解説動画も見たうえで、無編集・解説なしの転載だけを削除対象に選んでいました。
この記録がある以上、「検討を怠った」とは言えない、というのが裁判所の判断です。
見落としてはいけないのは、検討の中身が正しかったかどうかは問われない点です。
裁判所が見るのは「申請者が本気で侵害だと思っていたか」だけで、判断が甘くても、意図的に検討をサボったのでなければ責任は問われません。
Channel 781は「削除の本当の目的は検閲だ」とも主張しましたが、きちんと検討した以上、動機は関係ないとされました。
なおWCACは市の委託先であって自治体そのものではありません。
この判決を紹介した法学者のEric Goldman氏は、行政の会議の記録なのに、委託先が著作権を盾にして市の検閲を代行しているかのようだ、という趣旨の指摘もしています。
「うその申請」への反撃は、ほぼ勝てない
Goldman氏は約10年前から、「申請者が『フェアユースを考えました』と証言すれば、この種の訴訟はそこで終わる」と指摘してきました。
今回はその典型例です。
実際、過去の同種の訴訟も大半が棄却や敗訴に終わっています。
つまり、動画を消された側が「申請はうそだった」と反撃して勝つ道は、制度としては用意されているものの、実際にはほぼ通らないということです。
自分のチャンネルにどう影響するか
他人の動画を使う側でも、自分の動画を守る側でも、覚えておいて損はありません。
- 他人のクリップを使うチャンネルは、削除申請が来たあとに「うその申請だ」と反撃する道はほぼ無いと割り切っておくと、判断が速くなります。
異議申し立てを出すか、すぐ差し替えるか、現実的な選択肢を先に決めておきましょう。 - 逆に、自分の動画を無断転載されて削除申請を送る側になったときは、「引用にあたるか検討した記録」(メモ・メール・参考にした資料)を日付つきで残しておくと、あとから訴えられても守られます。
- 市議会や行政の会議の映像でも、著作権は自治体ではなく委託業者が持っていることがあります。
公的な内容だから自由に使える、とは限りません。
使う前に権利関係を確認してください。
出典
- A 512(f) Case Survived a Motion to Dismiss. Guess What Happened Next–Channel 781 v. WCACTechnology & Marketing Law Blog (Eric Goldman)

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