Channel 781判決、DMCA削除通知でフェアユース考慮すれば512(f)は棄却
- マサチューセッツ州の議会中継録画を転載したYouTubeチャンネルが、削除通知の送信者を512(f)条で訴えましたが、棄却されました。
- フェアユースを主観的に検討した記録があれば、削除通知の送信者は免責されるという判断が示されました。
- 他人の動画を切り貼りして使うチャンネル運営者は、512(f)での逆襲が難しい現実を踏まえて対応する必要があります。

市議会の録画をクリップしたらアカウント停止になり、逆に訴えた話
Channel 781は、マサチューセッツ州ウォルサム市のローカルニュースを配信するYouTubeチャンネルです。
市の議会中継を録画していたのは、市の公共アクセスチャンネルを運営するWaltham Community Access Corporation(WCAC)です。
Channel 781は、その録画からニュース性のある部分を無断で切り出し、タイトルと字幕を付けて投稿していました。
2023年9月、WCACはYouTubeに3件の削除通知を送ります。
対象はChannel 781の動画15本です。
YouTubeはこれに応じて動画を削除し、アカウントも一時停止しました。
Channel 781は、WCACがフェアユースを検討せずに虚偽の申告をしたとして、17 U.S.C. 512(f)条で提訴しました。
WCACはウォルサム市の下請け業者であり、自治体そのものではありません。
そのため、行政の会議の記録にも著作権が絡むという複雑な状況です。
ブログ主のEric Goldman氏は、WCACが著作権を盾に市の検閲の代理をしているかのようだと指摘しています。

フェアユースの主観的な検討があれば免責
今回の判決で、連邦地裁は9巡回区のRossi判決に従い、512(f)条の責任は送信者が「主観的に権利侵害だと思っていなかった」場合にだけ成立するという基準を採用しました。
客観的に間違っていたかどうかは問いません。
裁判所が認めたのは、WCAC側がフェアユースを検討した記録です。
担当者のWangler氏は、フェアユースの説明をメールで読み、YouTubeの解説動画も視聴しました。
そのうえで、無編集・無解説でそのまま転載した動画だけを削除対象に選んでいます。
このプロセスがあれば、陪審が「WCACはフェアユースを考慮しなかった」と判断するのは合理的ではないとされました。
Channel 781は、WCACが検閲目的で削除通知を送ったと主張しました。
しかし裁判所は、フェアユースをきちんと検討した以上、動機がどうであれ無関係だと述べています。
フェアユースの判断が甘かったとしても、意図的に検討を怠ったわけではないというのが結論です。
512(f)はほぼ勝てない訴訟のまま
Eric Goldman氏は、約10年前のLenz判決の際、削除通知の送信者が「フェアユースを考えました」と証言すれば、512(f)訴訟はそこで終わると書いていました。
今回の判決はその典型例です。
実際、過去の多くの512(f)訴訟も請求棄却や敗訴に終わっています。
この判決も、512(f)が「実質的に勝ち目が薄い」制度であることを改めて示しました。
自分のチャンネルにどう影響するか
他人の動画を使う側と、自分の動画を守る側のどちらにしても、今回の判決は覚えておいて損はありません。
- 他人のクリップを活用するチャンネルは、512(f)での逆襲はほぼ望めないと割り切っておくと、削除通知が来たときの判断が速くなります。
カウンターノーティスを出すか、すぐに差し替えるか、現実的な選択肢を先に考えておきましょう。 - 権利者として削除通知を送る場合は、フェアユースを検討した記録を残しておくと、あとから512(f)で訴えられても安心です。
メールやメモ、参考にした資料を日付つきで保存しておきましょう。 - 市議会や行政の会議を撮影した映像は、自治体ではなく委託業者が著作権を持つことがあります。
公的な内容でも削除対象になり得るため、利用前に契約関係を確認しておくことをおすすめします。
出典
- A 512(f) Case Survived a Motion to Dismiss. Guess What Happened Next–Channel 781 v. WCACTechnology & Marketing Law Blog (Eric Goldman)
コメント
まだコメントはありません。最初の1件をどうぞ。