「作品の15%しか使ってない」は通じず 米裁判所がアニメ解説チャンネルの身元開示を認める
- 8月、アニメを紹介する韓国語のYouTubeチャンネル3つについて、運営者の情報を開示するよう米国の裁判所が認めました。
- チャンネル側は「本編の15%しか使っていない」「公式サイトに視聴者を送っている」と反論しましたが、通りませんでした。
- 分かれ目になったのは使った長さではなく、「作品を説明しているだけ」かどうかでした。
登録者35万〜50万人のチャンネルが対象に
米カリフォルニア州の連邦地方裁判所が7月17日、アニメを解説する3つのYouTubeチャンネルについて、運営者の情報をKADOKAWA側に開示することを認めました。チャンネル側が出していた異議を退けた形です(TorrentFreak)。
3チャンネルはいずれも韓国語でアニメを紹介していて、登録者数は35万人から50万人。それぞれ数百本の動画を投稿していました。
「15%しか使っていません」
チャンネル側が主張したのは「フェアユース」という考え方です。これは米国のルールで、批評や研究のためなら他人の作品を多少使っても著作権侵害にならない、というものです。解説系のチャンネルがよりどころにしてきました。
3人の言い分はこうでした。
- アニメを丸ごと流してはいない。ある動画では第4話の15%程度しか使っていない
- 韓国語の字幕と解説をつけた、韓国の視聴者向けの独自の内容だ
- 公式の配信サービスにリンクを貼り、11万4494回のクリックを送っている
数字も具体的で、一見すると筋が通っているように見えます。それでも裁判所は認めませんでした。
「説明しているだけ」
裁判所が問題にしたのは、使った長さではありませんでした。その動画が何をしているかです。
判断はこうでした。これらの動画は「批評でもパロディでもなく、作品を作り変えたものでもない。ただ作品を説明して、ナレーションをつけているだけだ」。つまりフェアユースが認める「新しい価値を足す使い方」にあたらない、というわけです。
ここが怖いところです。使う時間を短くしても、やっていることが「あらすじの説明」なら結論は同じになりえます。10分の動画のうち本編は1分だけ、という作り方をしていても、その1分が説明のためだけなら、短さは決め手になりません。
公式に11万クリックを送った実績も効きませんでした。宣伝になっているから大丈夫、という理屈は通らなかったことになります。
匿名でも名前は出ます
もうひとつ知っておきたいのが、今回使われた手続きの手軽さです。
「DMCA召喚状」という仕組みで、本来は裁判所の書記官がサインするだけで出せます。著作権侵害で訴える前の段階で、YouTubeに「誰が投稿したのか教えてください」と求められるものです。実際、侵害そのものを問う裁判はまだ始まっていません。
顔も本名も出さずに運営していても、この一手で情報が権利者に渡ります。
3人は控訴していて、結論が出るまで開示を止めるよう求めています。確定した判断ではないので、この先ひっくり返る可能性は残っています。
自分のチャンネルにどう影響するか
ここからは、日本でチャンネルを運営している方に向けた話です。
まず前提として、これは米国の裁判所が米国の法律で出した判断です。日本の著作権法とは別のものです。ただしYouTubeは米国の会社なので、同じ手続きは日本の運営者にも使えます。「日本にいるから関係ない」とは言えません。
そのうえで、解説や切り抜きをしているなら、確認しておきたいことが3つあります。
1. 動画が「説明」で終わっていないか
あらすじを追う、名シーンを並べる、内容をまとめる。これらは「説明」に分類される可能性があります。
一方で、なぜこの演出が効いているのかを分析する、他の作品と比べる、制作の背景を調べて語る。こうした要素があれば「自分の視点を足している」と言いやすくなります。
自分の動画を1本選んで、本編の映像を全部消したら何が残るかを考えてみてください。何も残らないなら、危ない側にいます。
2. 「短く使えば大丈夫」という考えは捨てる
15%が通らなかった以上、使う長さで安全ラインは引けません。短いほうがいいのは変わりませんが、「◯%までなら平気」を運用の柱にしないほうが安全です。
3. 顔出ししていないことを対策に数えない
チャンネルが消えるだけでなく、運営者本人が特定される段階があります。会社としてやっているなら、誰の名前で運営しているか整理しておきましょう。個人なら、連絡先として登録している情報が開示されうると考えてください。
なお、これは「解説動画をやめましょう」という話ではありません。作り方の重心を、紹介から分析へ寄せる余地があるかどうかの問題です。
コメント
まだコメントはありません。最初の1件をどうぞ。